M&Aで後悔しないために:売手目線で語る成功確率を高める7つのポイント
近年、事業承継や事業拡大、経営資源の有効活用など、様々な目的でM&Aが注目されています。しかし、M&Aは必ずしも成功するとは限らず、売手側にとっても大きなリスクを伴うものです。
本記事では、売手目線でM&Aの成功確率を高めるための7つのポイントについて解説します。
1. 明確な目的と目標の設定
M&Aを検討する前に、なぜM&Aを行うのか、どのような目標を達成したいのかを明確にする必要があります。下記は譲渡後の買手による事業及び会社のさらなる発展を目標とすることができます。
- 事業承継(後継者問題の解決、事業理念・文化の継承)
- 事業拡大(新規市場への参入、規模の経済によるコスト削減、新規事業への投資)
- 経営資源の有効活用(遊休資産の活用、経営資源の集中による効率化)
- 収益向上(売上増加、コスト削減、シナジー効果による収益拡大)
- コスト削減(規模の経済によるコスト削減、調達コストの削減、間接部門の統合による効率化)
- リスク分散(事業の多角化によるリスク分散、経営安定化、市場変化への対応力強化)
M&Aの目的と目標を明確にすることで、適切な買い手候補を見つけることができ、交渉においても様々な提案をすることで交渉が有利に進む可能性もあります。
2. 財務状況の整理
M&Aにおいて、買収候補企業は売却する会社の財務状況を詳細に分析します。そのため、財務状況を整理しておくことは非常に重要です。
- 過去3年間の決算書
- 資金繰り表
- 資産負債表
- 税務申告書
財務状況を整理しておくことで、デューデリジェンス(買収先(買手)による企業調査)をスムーズに進めることができ、買収価格の交渉においても適正な価格の主張もできます
3. M&Aアドバイザーなどの専門家に依頼
M&Aは複雑な手続きを伴うため、専門知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーなどの専門家に依頼することを強くおすすめします。専門家は、以下のようなサポートを提供します。
- 買収候補企業の探索
- 買収条件の交渉
- 契約書の締結
- M&A後の統合支援
専門家のサポートを受けることで、M&Aの成功確率を高め、売却後のリスクを最小限に抑えることができます
4. 本業をおろそかにしない
M&Aは時間と労力を必要とするプロジェクトです。しかし、M&Aに注力するあまり、本業をおろそかにしてはいけません。本業がうまくいかなければ、M&Aの成果も意味を成さなくなってしまいます。
M&Aを成功させるためには、本業とM&Aの両立を図ることが重要です。そのためには、以下の点に注意する必要があります.
- M&A担当者を明確にする
- M&Aのスケジュールを明確にする
- 本業への影響を最小限に抑える
5. 買収先企業との文化・価値観の適合
M&Aは単なる企業買収ではなく、異なる文化や価値観を持つ組織同士の統合です。買収先企業との文化・価値観の適合度が低い場合、統合後の摩擦や混乱が生じ、M&Aの失敗に繋がる可能性があります.
買収先企業を選ぶ際には、以下の要素を総合的に判断し、文化・価値観の適合度が高い企業を選択することが重要です.
- 経営理念
- 企業文化
- 社員意識
- コミュニケーションスタイル
6. 従業員の理解と協力
M&Aは従業員にとっても大きな変化です。M&Aに対する従業員の理解と協力を得られなければ、M&Aの成功は難しいでしょう.
従業員の理解と協力を得るためには、以下のような対策が必要です.
※※但し、事前に従業員に伝える場合、リスクも伴いますのでケースバイケースで慎重に行ってください.※※
- 経営説明会を開催する
- 社内報やメールで情報を発信する
- 個別面談を実施する
- 研修プログラムを実施する
7. 長期的な視点に立った計画と実行
M&Aは短期間で成果が出るものではありません。M&A後の統合やシナジー効果の実現には、長期的な視点に立った計画と実行が必要です.
長期的な視点に立って、M&Aを成功に導きましょう.
- M&A後の事業計画を策定する
- 統合チームを設置する
- コミュニケーション計画を策定する
- 統合後のリスクを管理する
その他、M&Aを成功させるために以下の点にも注意する必要があります.
- デューデリジェンスの実施(財務以外にも、税務、法務、環境、ビジネス等のDDもある)
- リスク管理(取引先や従業員への漏洩など)
- コミュニケーションの徹底(担当者、アドバイザー等の専門家とのコミュニケーション)
- 統合プロセスの設計(買手との綿密な事前打ち合わせ)
- アフターフォロー体制の構築(譲渡後の引継ぎ等の体制)
- 柔軟な対応力(M&Aの手続きには決まりはない、また突発的問題も多々発生する)
まとめ
M&Aは、売手側にとっても大きな決断です。上記のポイントをしっかりと理解し、慎重に検討を重ねなければ、後悔する可能性もあります.
M&Aを成功させるためには、専門家のサポートを受けながら、本業を維持しつつ、買収先企業との文化・価値観の適合を図り、従業員の理解と協力を得て、長期的な視点に立った計画と実行を行うことが重要です.
さらに、シナジー効果の実現に向けた具体的な取り組みや、デューデリジェンスの実施、リスク管理、コミュニケーションの徹底、統合プロセスの設計、アフターフォロー体制の構築、柔軟な対応力などにも注意する必要があります.
M&Aは、慎重に検討し、適切な準備を行うことで、企業の成長を促進する強力なツールとなります.
参考資料
- M&A成功のための戦略と実行: [書籍情報]
- M&Aの教科書: [書籍情報]